日米首脳会談

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2月10日に安倍総理大臣とトランプ大統領の首脳会談が行われました。

日米首脳会談(外務省)

会いに行けるアイドル真っ青の濃密な握手や別荘への招待など、異例の厚遇ぶりだったそうです。

トランプ大統領は『握手会でのし上がるアイドル』の基本をすべて実践していると話題に「これは釣られるかも」「アイドルがむしろ参考にしたのでは」

肝心の中身はというと、トランプ大統領の過激発言もなく、当たり障りのない内容だったようです。

日米共同宣言の内容を抜粋しました。
日米共同宣言(外務省)

■日米同盟

・日米両国がキャンプ・シュワブ 辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に普天間飛行場の代替施設を建設する計画にコミッ トしていることを確認。
・日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることを確認。
・北朝鮮に対し,核及び弾道ミサイル計画を放棄し,更なる挑発行動を行わな いよう強く求める。
・拉致問題の早期解決の重要性を確認。
・防衛イノベーションに関する二 国間の技術協力を強化。
・宇宙及びサイバー空間の分野における二国間の安全保障協力を拡大。

■日米経済関係

・国内及び世界の経済需要を強化するために相互補完的な財政,金融及び 構造政策という3本の矢のアプローチを用いていくとのコミットメントを再確認。
・自由で公正な 貿易のルールに基づいて,日米両国間及び地域における経済関係を強化することに引き続き 完全にコミットしていることを強調。
・米国が環太平洋パートナーシップ(TPP)から離脱した点に留意し,両首脳 は,これらの共有された目的を達成するための最善の方法を探求することを誓約。
・上記及びその他の課題を議論するための経済対話に両国が従事することを決定。

いつも通りの内容といった印象ですが、私が気になるのは一番最後の

上記及びその他の課題を議論するための経済対話に両国が従事することを決定。

です。

麻生副総理と米ペンス副大統領とで会談が行われ、”新しい経済対話の枠組み”を作ることで合意したそうです。

麻生副総理は、日米首脳会談で合意したペンス副大統領との新しい経済対話の枠組みについて、「具体的には経済分野の協力に尽きる。互いに金融や財政などの政策に取り組み経済成長を図っていく。通商も取り上げる」と述べ
麻生副総理 経済対話の枠組みで具体的検討を(NHK)

 

麻生副総理とペンス副大統領の下での経済対話においては、経済政策、インフラ投資やエネルギー分野での協力、貿易・投資ルールの3つを柱とすることで一致した。
日米首脳会談(外務省)

これは、80年代の日米貿易摩擦を背景に行われた”日米構造協議”や、小泉政権で始まった、年次改革要望書で有名な”規制改革及び競争政策イニシアティブ”の流れを組むものになる可能性が高いと考えられます。

つまり、”アメリカの要望をお伺いする枠組み”というわけです。

”規制改革及び競争政策イニシアティブ”では2001年から2009年まで、いわゆる”年次改革要望書”が交換されていました。

その中に郵政民営化など、小泉政権の主要な政策が含まれていたのは有名な話です。

ちなみに年次改革要望書は、以前は外務省のHPから見られたのですが、今はリンクが切れて見られなくなってしまったようです。
「成長のための日米経済パートナーシップ」の現状(外務省)

またアメリカから宿題を押し付けられるようになるのでしょうか。

今回の安倍総理への厚遇っぷりも、その布石なのかもしれません。

今回トランプ大統領は異例の厚遇で安倍総理を迎えました。

これは、一つの基準を設けたと考えられます。

今後、安倍総理が”宿題”をやってこなかった場合、次の日米首脳会談では”食事の回数を減らす” ”ゴルフはナシ”などで簡単に”不快感”を示すことが出来るようになりました。

食事やゴルフなんて本質的にはどうでもいいことですが、安倍総理にとってはこれをされるととても痛いと思います。

今回設けられた”高い基準”を保ち続けるために、安倍総理はアメリカの宿題を必死にこなしていく、、、ということもありえない話ではないわけです。

それでは、アメリカは何を要求してくるのでしょうか。
大きく3つのシナリオが考えられます。

1.規制緩和
  年次改革要望書のパターン。TPPの焼き直し。

2.アメリカへの投資の拡大
  高速鉄道や工場誘致など。

3.内需拡大 
  80年代の日米構造協議では630兆円の公共投資の拡大を要求。

上記の3つに為替の話が組み合わされるのではないでしょうか。

トランプ大統領のこれまでの発言からすると2と3が可能性大です。

そして、3は日本経済の利益にも適うものです。

この点は京都大学教授であり内閣官房参与の藤井聡教授が指摘しています。

そもそも、「アメリカの対日貿易赤字の縮小」という議論は、80年代にもあったのですが、その時にアメリカ側が徹底的に要求してきたものが、これだったのです。

ちなみに、その時の対日要求は「630兆円もの超大型の、日本国内での公共投資の拡大」でした。
【藤井聡】日本の「内需拡大」こそ、良好な日米関係のために不可欠である。

藤井教授は、”2.アメリカへの投資の拡大”は円安を招き、結果的にトランプ大統領の反感を買うことになりかねないと指摘しています。

なぜなら、アメリカ側は「円」をもらっても、米国内投資などできないからです。日本からの対米融資で、米国内で投資するには、結局はどこかで「円からドルへの両替」が不可欠となります。そして、そういう両替は「円を売ってドルを買う」事ですから、必然的に円安を誘発するのです(もちろん、ドル準備高があるなら、それを回せばよいのですが、それは、対日貿易赤字が大量にあることが前提になっています)。
【藤井聡】日本の「内需拡大」こそ、良好な日米関係のために不可欠である。

”1.規制緩和”は論外で、中間層を疲弊させ、国民経済の活力が失われてしまいます。(具体的にはGDP成長率が下がります)
これはトランプ大統領の問題意識そのものです。

そうなると、”3.内需拡大”一択な気がしますが、現実はそう甘くはありません。

アメリカにもウォール街を中心に”1.規制緩和”を求める勢力がいますし、なにより安倍総理も岸田外相も「トランプ大統領にTPP離脱を翻意させる」と言っています。”1.規制緩和”がやりたくてウズウズしているわけです。

”2.アメリカへの投資の拡大”についても、トランプ大統領は円高政策とセットで要求してくるかもしれません。

というわけで、実際には1、2、3がごちゃまぜになった要求が突きつけられ可能性が高いわけです。

しかし、我が国は独立国ですから、相手国から

”自国に都合のいい要求が来ますように”

なんて祈ることはそもそもおかしいことです。

堂々と

お互いに内需拡大のための投資を行うのが双方に取って最も有意義な取り組みだ

と主張すべきです。

それが、福沢諭吉が述べた”一国の独立”なのです。
(参考)『学問のすゝめ』のすすめ

安倍総理にも、トランプ大統領のパシリではなく、対等なパートナーとして名を残して欲しいですよね。

内需拡大でデフレ脱却。これが日本のためにもアメリカのためにも最善の道なのです。

それでは今日はこのへんで。

 

これを読めばトランプ現象がわかる

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