今期イチオシしのアニメ、リトルウィッチアカデミア。
みなさん、もうご覧になりましたか?
一世を風靡した魔女、シャイニー・シャリオに憧れたアッコは魔女の家系でないにもかかわらず魔法学校で魔女を目指す。
ホウキで飛ぶこともままならず、落ちこぼれ街道まっしぐらでもアッコはけしてめげたりしない。
アッコを支える憧れのシャリオの言葉とは・・・
「信じる心があなたの魔法」
アッコはこの言葉の通り、シャリオを、夢を信じることで他のどの魔法使いよりも大きな奇跡を起こしていく。
そんなお話です。
「信じる心があなたの魔法」いい言葉ですよね。
私たちの生活においても、信じるということは大きな力をあたえてくれると思います。
ところで、この「信じる心があなたの魔法」を人類史の観点から分析した本が昨年に日本語訳されました。
この本は人類(ホモ・サピエンス)の誕生から現在に至るまでの歴史をまとめた壮大な本です。
NHKのクローズアップ現代で特集されて、今話題の一冊です。
クローズアップ現代
特に序盤で述べられている、我々ホモ・サピエンスが他の種族を圧倒し、生態系のトップに君臨した要因についての考察はとても興味深いです。
7万年以上前にはホモ・サピエンスの他にもホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)ホモ・エレクトスなどの様々な”人類”が存在しました。
ホモ・サピエンスは数ある”人類”の一種に過ぎなかったのです。
しかも、ホモ・サピエンスは他の”人類”に比べ、体格的には決して有利ではなかったと言います。
しかし7万年〜3万前にかけて、大きな変化が現れます。
だが その後、 およそ 七 万年 前 から、 ホモ・サピエンス は 非常 に 特殊 な こと を 始め た。 その ころ、 サピエンス の 複数 の 生活 集団 が、 再び アフリカ 大陸 を 離れ た。 今回 は、 彼ら は ネアンデルタール 人 を はじめ、 他 の 人類 種 を すべて 中東 から 追い払っ た ばかりか、 地球 上 からも 一掃 し て しまっ た。
ユヴァル・ノア・ハラリ. サピエンス全史
(Kindle の位置No.449-451). 河出書房新社. Kindle 版.
いったい何が起こったのか?それは
認知革命
であるとハラリは指摘します。
ホモ・サピエンスは何かのきっかけで、あるものを認知することが出来るようになりました。
私たちの祖先が認知できるようになり、現在に至っても他の動物が認知できないもの。それは
虚構
です。
ここでいう虚構とは単なる”嘘”ではありません。(チンパンジーは嘘をつくことがあるそうです)
虚構とは
見えも聞こえも触れもしないことを信じる
ということ。さらに言えば
神話を信じる
ということです。
私たちを含む動物が自然な集団を形成できる構成員の数は、150が限界だそうです。
150というのはお互いに顔見知りで居られるおおよその限界なんだそうです。
150を越えると動物の群れは自然を分裂し、私たち人間の会社の部署なども、150人を越えると分割したほうが効率が上がるようです。
しかし、私たちはいくつもの部署が集まった”会社”や、いくつもの集落が集まった”市”、そして最終的には1億人以上の国民が集まる”日本国”という共同体を形成しています。
なぜ私たちは自然の限界を超えて大きな共同体を築けるのか。
それが”神話”の力なんです。
会社を例に考えてみましょう。
会社勤めの方は、朝起きたら会社に行きます。
でも、会社ってなんでしょう。
本社ビルでしょうか?本社ビルを木っ端微塵にすれば会社は無くなるでしょうか?
そんな妄想は月曜朝の定番ですが、私たちは本社ビルを木っ端微塵にしても会社は無くならないことを知っています。
それでは社長でしょうか。社長は放っておいても代わります。
社員を入れ替えても、株主を入れ替えても会社は無くなりません。
それじゃあどうしたら会社をなくせるんだ!!
残念ながら(?)物理的な方法で会社を消し去ることはできません。
なぜなら会社は虚構であり神話だからです
会社に実体は有りません。会社とは、法によって規定された経済主体、”法人”なのです。
そして、当然法律にも実体は有りません。
つまりなぜ会社があるのかと問われれば、その答えは「私たちが会社があると信じているから」となるわけ。
これは国家、宗教、思想、学問、貨幣すべてに言えることです。
私たちはこれらの”神話”を信じることによって、見ず知らずの人とも協力することができます。
社長の直接の知り合いでなくでも会社方針には従うし、顔も見たことのない人事が決めた指定駐車場に(不本意ながらでも)車を停めます。
こうして私たちは”会社”という神話に基づいた”協力ネットワーク”により従来の”群れ”とは比較にならないほどの成果をあげることが出来るようになったのです。
これはまさに魔法です。
信じる心は、本当に魔法だったんです。
先月、京都の清水寺に行ってきました。
有名な清水の舞台を見て、その迫力に圧倒されました。
柱の一本一本が巨木なんです。それをクレーンもガソリンもない時代に、人と牛馬だけで造り上げたんです。
これも仏教を信じる心が起こした魔法です。
昔の日本はこんなすごいことが出来たんだなぁ、、、
感心する一方で、少し寂しくなってしまいました。
50年前、日本は東海道新幹線の東京−大阪間を着工からわずか5年で完成させました。
当時の日本人は”日本経済は成長する”という神話を信じていたからです。
今の日本人はもはや成長神話を信じていません。”成長神話”という単語は、ネガティブな文脈で使われるようになってしまいました。
その結果、50年ぶりに行われる2020年東京オリンピックにリニア新幹線は間に合いません。それどころか完成予定は20年後です。これだけ技術が進歩しているにもかかわらずです。
私たちの国は今や、リニアどころか競技場一つ造るにもお金や工期の心配をしなければならなくなってしまいました。
私たちの”魔法”は消えてしまったのです。
日本はもう成長しない
人口減少で衰退する
みんなで貧しくなればいい
成長神話なんて夢物語だ
そんな、信じる心とは反対の”呪い”がちまたには溢れています。
夢物語?信じる心さえあれば、これから日本が成長することだって夢物語じゃないんです。
いいえ、これは正確ではありませんね。
私たちが生きているこの世界も”物語”なんです。
そして物語を紡ぐのは私たちの”信じる心”以外にないんです。
さあ、手を伸ばせばデフレ脱却の物語が始まります。
ようこそ!魔法の世界へ!