去年の10月ごろ、ディズニーの映画ズートピアを観ました。
当時はアメリカ大統領選挙の真っ最中でしたが、私はこの映画を見て
あれ?トランプ当選有り得るかも・・・
と思いました。
こういうことは事前に書いておかないとかっこ良くないんですが、報道を見ているとトランプ大統領当選の困惑はまだ続いているようなので、今更ですが書いておきます。
ズートピアのあらすじ
肉食動物はかつて、草食動物を”捕食”していた。
しかし、今や我々は”理性”を持ち、互いに手を取り合ってズートピアで暮している。
(ズートピアは作中の都市。Zoo+Utopia=動物の理想郷)
ウサギの新米警官ジュディと狐の詐欺師ニックは偶然の出会いから(職業上の)対立を経て、やがて大きな事件に巻き込まれていく・・・
この物語の主題は”差別・偏見の否定”、”多様性の賛美”と観て取れます。
予告動画にある通り、ウサギのジュディは肉食動物社会の警察でバカにされていました。
偏見にめげずに努力して同僚や上司からの信頼を勝ち取っていくというのが大きな物語の流れです。
さて問題は作中でジュディとニックが直面する”大きな事件”です。
ズートピアで複数の肉食動物が行方不明になります。
ウサギだからという理由でこの事件の担当から外されていたジュディはニックの(弱みを握ったうえで)協力をへてついに行方不明の肉食動物たちを見つけ出します。
しかし、発見された肉食動物たちは皆、かつての野生の頃のような、獰猛な肉食獣になってしまっていたのです。
独自に功績を挙げたジュディには、世間から大きな関心が集まります。
記者会見で記者たちは、次々と質問を投げつけます。
「凶暴化したのはどんな動物でしたか?」
「突然凶暴化するのにはどんな要因があるとおもいますか?」
舞い上がってしまったジュディはとっさに、受け売りの文句を口にしてしまいます。
「おそらく、生物学的な要因があると思われます。」
この発言がきっかけで「肉食動物は危険」「肉食動物は監視・隔離すべきでは?」という世論が巻き起こります。
戸惑うジュディをよそに、肉食動物は肩身の狭い思いを強いられます。
ライオンの市長への風当たりは強く、警察署の同僚のベンジャミン(猫)は、人目につかない裏方の仕事に回されてされてしまいます。
私は、これはアメリカ白人の不安を表現しているんだなと思いました。
ネットでの考察を見ると、肉食動物を黒人や移民と見る見方も有るようですが、私はそうは思いません。
肉食動物が市長や警察署長などの高い地位に就いていること、作中で「草食動物は肉食動物よりも圧倒的に数が多い」と明かされていることから、肉食動物=白人と見るのが妥当だと考えます。
白人がマイノリティ(少数派)ということには違和感があるかもしれません。
たしかに現在のアメリカ人口の人種割合は、白人が64%を占めています。(2010年)
しかし、一方で生まれてくる子供の割合は2011年ごろから白人が50%を下回っています。
すでに幼稚園では白人はマイノリティになっているということです。
また、アジア系、南米系の移民が毎年入ってきます。
2045年にはアメリカ人口の人種割合で白人が50%を下回ると言われています。
ドキュメンタリー映画監督のマイケル・ムーアは
「アメリカ白人はつねに何かに怯えている。国外では共産主義やテロリストに、国内では黒人に怯えて暮らしている。」
と指摘しています。
アメリカ建国史や西部劇は、アメリカ白人にとっては古き良き神話であり時代劇ですが、他の人種にとっては必ずしもそうではありません。
過去を振り返り、これからのことを考えると、白人は
俺たち、いつか仕返しされるんじゃないか?
これからは俺たちが迫害されるんじゃないか?
と漠然とした不安を持っているのではないでしょうか。
トランプの支持者は白人の中間層、貧困層が多いそうです。
トランプの極端な言動が支持される背景にはこうした不安があるのではないでしょうか。
ズートピアの結末は、肉食動物の凶暴化は”生物学的要因”ではなく陰謀によるものだということが明らかになり、首謀者を捉えた後、街は平和を取り戻します。
この物語の特徴は強者がマジョリティ(多数派)に迫害されるというところです。
物語終盤のハッピーエンドに向けた展開は、
僕たち(白人)をいじめないで!
という叫びにも聞こえます。
建国以来、多様な人種を受け入れてきた人種の坩堝アメリカですが、人種間の緊張は今も続いており、経済的困難に伴い、その緊張は増してきているように思えます。
人種や移民の問題は、日本にとっても決して他人事ではありません。
いまアメリカで何が起きているのか、これからどうなっていくのか。しっかりと見極めていく必要があると思います。
それでは今日はこのへんで。