二 〇 〇 八 年 の リーマン・ショック 時 に、 これ は「 一 〇 〇 年 に 一度 の 危機」 だ と 喧伝 さ れ まし た。 その後、 各国 の なりふり 構わ ない 財政出動 や 金融緩和 によって、 八 〇 年前 の 世界恐慌 の 再来 は 回避 さ れ て い ます。 その ため、 危機 は 大げさ に 喧伝 さ れ すぎ て いる という 批判 も なさ れる よう になり まし た。
しかし、 私 の 考え は 違い ます。
これ は 静か なる 恐慌 なの です。 今回 の 一連 の 危機 は、 明らか に 従来 の 不況 とは 違う、 もっと 巨大 な インパクト を もっ て いる と 考える べき なの です。柴山桂太. 静かなる大恐慌 (集英社新書) (Kindle の位置No.125-129). . Kindle 版.
今日紹介するのは柴山桂太氏の「静かなる大恐慌」です。
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この本は2012年に書かれたものですが、今の世界の保護主義の台頭を予言していたと話題になっています。
英国のEU離脱に続くトランプ米大統領誕生で決定的となったグローバリズムの限界。「保護主義」へ舵を切った米英両大国の潮流を、5年も前に見通していた気鋭の学者がいた。2012年に出版した「静かなる大恐慌」(集英社新書)で、EU崩壊やグローバル化の終焉を“予言”していたのが、京大大学院准教授の柴山桂太氏だ。世界の「保護主義」への流れはもう止まらないのか、日本はどうしたらいいのか――。
日刊ゲンダイ 本格化する保護主義への流れ 柴山桂太氏「トランプは前座」
柴山准教授は、グローバル化は一方通行に広がり続けるものではなく、歴史上何度も拡大、縮小を繰り返してきたと指摘します。
そして、リーマンショック後の世界と100年前の世界情勢の類似性から、今後脱グローバル化の流れが起こり保護主義が台頭する可能性を予見したのです。
■100年前の世界
本書が書かれた2012年の100年前はどんな世界だったか。
1912年は第一次世界大戦勃発の2年前です。
当時の世界は現代に負けないくらいのグローバル社会だったんです。
当時のグローバル化は帝国主義によって推し進められていました。
欧米の列強諸国は世界の海へと進出し、非西洋諸国に自由貿易を持ちかけ、植民地化していきました。
植民地というのは完全なビジネスです。
植民地とは輸出品の生産工場(=プランテーション)であり投資対象でした。
世界中の植民地と帝国国家との間で盛んに貿易や資本移動(対外投資)が行われていました。
イギリスをはじめとした当時の帝国国家資本移動の量は現代を上回る水準であったと言います。
資本 の 移動 について は、 国 によって は 現在 よりも 盛ん だっ た と いえ ます。 図 4 に ある よう に、 イギリス、 フランス、 日本 などの 主要 国、 そして 南米 の アルゼンチン では、 一 九 一 四 年 以前 の ほう が 一 九九 〇 年代 よりも 高い 水準 だっ た こと が 分かり ます( その ため、 この 時代 は 第一 次「 金融」 グローバル 化 と 呼ば れる こと も あり ます)。 戦前 の 日本 が、 インフラ 整備 や 日露戦争 などの 資金 を、 ロンドン 市場 の 起債 で まかなっ て い た のは 有名 な 話 です。
柴山桂太. 静かなる大恐慌 (集英社新書) (Kindle の位置No.427-431). . Kindle 版.
そんな、今と同等以上にグローバル化した20世紀初頭ですが、各国の国民の間では自由貿易やグローバル化への不満が高まっていたと言います。
また、 第一 次 グローバル 化 の 時代 には、 自由貿易 に対する 国内 の 不満 も 高まる 一方 でし た。 一 九 世紀末 から、 アメリカ、 ドイツ、 フランス では 関税 の 引き上げ が 強化 さ れ ます。 自由貿易 の 本家 だっ た イギリス でも、 ドイツ の 輸出 攻勢 への 強い 不満 が あり まし た。 一八 八 七年 の 商品 標示 法 では、 ドイツ 製品 には「 メイド・イン・ジャーマニー」 を 標記 する こと が 義務づけ られ まし た。 そう する こと で イギリス の 消費者 を、 ドイツ の 安く て 粗雑 な 製品 から 守ろ う と し た わけ です(
柴山桂太. 静かなる大恐慌 (集英社新書)(Kindle の位置No.511-515). . Kindle 版.
なんだか現代のアメリカの、中国に対する不満に似ていますよね。
行き過ぎたグローバル化は、その反動として保護主義を生み出すのです。
そして前回のグローバル化は2回の世界大戦という結末を迎えました。
第二次世界大戦後、グローバル化は後退しました。
今のグローバル化は1980年代から再び始まったものです。
そしてリーマンショック後、グローバル化への反動が徐々に強まっているように思えます。
柴山准教授は「トランプは前座にすぎない」と指摘します。
トランプ大統領のやり方はメチャクチャですが、彼の保護主義的な政策がアメリカ国民の支持を得た背景には歴史的な文脈があるのです。
グローバル化は先進国の労働者の賃金を抑制し、グローバル化によるバブルが崩壊すると大量の失業者が出ます。
グローバル経済に翻弄される国民のやり場のない怒りがトランプ大統領を生み出したのではないでしょうか。
現代のグローバル化はもはや持続可能とは思えません。
歴史に学び、もう一度国民を豊かにする経済について考え直す時が来たのではないでしょうか。
それでは今日はこのへんで。